会長挨拶

会長 杉山 隆
愛媛大学大学院医学系研究科 産科婦人科学講座
この度、第49回の年次学術集会を愛媛大学が担当することとなりました。令和7年8月8日(金)~9日(土)、松山市のダウンタウンに位置するリジェール松山において、“温故知新:栄養学の父の故郷より”をテーマに開催いたします。
晩産化に伴い、偶発合併症や基礎疾患を有する妊娠が増加しています。現在の生殖年齢女性は主に1980~1990年代生まれであり、彼女たちの子宮内環境は高脂肪食にさらされた状況にあります。子宮内環境が次世代の疾患発症と関連することはよく知られています。したがって、超少子高齢化の時代において、最近の生殖年齢女性の3分の1以上に及ぶやせと肥満は、妊娠合併症にとどまらず、次世代の健康を守る観点からも重要です。このような背景を踏まえ、プレコンセプションケアやインターコンセプションケアをしっかりと行うことが望まれます。より良い妊婦管理を実現するためには、妊娠中のみならず妊娠前からの評価、さらに妊娠中や産後の継続的な管理が必要です。本学術集会では、この視点から女性の栄養や代謝に関する多職種が集まり、議論を深めることを期待しています。
また、産婦人科医だけでなく、小児科医、内科医、母性内科医、栄養士、薬剤師、看護職などが集う学術団体への移行を見据え、周産期領域に加え、プレコンセプションケアや腫瘍領域にも配慮した学際的なプログラム構成を考案しました。具体的には、世界的に著名な栄養学者である佐伯矩博士が愛媛出身であることに着目し、恩地森一愛媛大学名誉教授に佐伯氏と栄養学の歴史についてご講演いただきます。また、佐伯博士が設立した現在の国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所所長である瀧本秀美先生には、同研究所の歴史と日本人女性に関する食事摂取基準の変遷についてご解説いただきます。この講演に関連して、今後の妊産婦の食事摂取基準の方向性を議論するワークショップも準備しています。さらに、腫瘍と代謝に関する研究の進展についても触れ、公益財団法人実中研所長兼専務理事である末松誠先生に、女性の視点を含むがんと代謝に関する最先端の研究を紹介していただきます。その他にも、栄養士・薬剤師による女性をテーマにしたセッションも予定しています。また、妊娠糖尿病の管理に関するシンポジウムでは、わが国のデータに基づいた最新の知見をご提供いたします。
本会の益々の発展を祈念し、ぜひとも道後温泉や松山城など、松山の観光スポットも満喫いただきたいと思います。多くの皆様にご参加いただけることを心よりお待ちしております。