会長挨拶
会長 眞部 紀明
(川崎医科大学 検査診断学)
この度、本学会総会を、歴史と文化の薫り高い都市、松山の地にて開催できますことを、大変光栄に存じます。このような知的好奇心を刺激する地で、平滑筋学の新たな未来を語り合う機会を得られますことを、心より嬉しく思います。会員の皆様、そして平滑筋研究にご尽力されている全ての皆様のご参加を心より歓迎申し上げます。
今回のテーマ「平滑筋研究の創発:基礎から臨床へ、未来を拓くシームレスな連携」は、単なる基礎と臨床の交流を超えた、より積極的な「融合」を目指しています。
例えば、消化器領域に目を向けますと、ご存知の通り、かつて多かった消化性潰瘍などの器質的疾患(目に見える異常がある病気)は減少しつつあり 、代わりに機能性消化管疾患(機能の異常が主体で、構造的な異常が見えにくい疾患)の割合が高くなっています 。現在、この領域ではその病態解明に向けて腸内細菌、アレルギー、そして各種免疫機構(各種免疫の仕組み)を介した広義の消化器病態研究が活発化しているように感じられます 。こうした広範な消化器病態の根幹には、平滑筋の機能が直接的あるいは間接的に深く関わっており 、その重要性は改めて強調されるべきものと確信しております。
このような背景のもと、本テーマの目指す「シームレスな連携」とは、以下の2つの実現を目指しています。
高次のトランスレーショナル・ループの確立:平滑筋機能の基礎的な分子・細胞メカニズム(Bench)を、各種疾患の新たな診断・治療法(Bedside)へと絶え間なく繋ぎ、その臨床的フィードバックを再び基礎研究へと還元する、循環的な研究体制の構築
学術的な「創発」の誘発:個別臓器や専門分野の枠を超えて研究者が連携することで、平滑筋学における「創発」、すなわち従来の知見では予測し得なかった革新的な研究成果を生み出すこと
この連携を通じて、トランスレーショナル研究による平滑筋関連研究が、今後の医学の進歩に大きく貢献できるものと確信しております。本総会が、平滑筋に関連する様々な領域の疾患の克服に資する、具体的議論と共同研究の出発点となることを強く願っております。

