第11回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム

第11回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム

大会長挨拶

第11回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム 大会長
末岡 榮三朗
(一般社団法人ゆうあい社会福祉事業団未来型医療研究所所長/佐賀大学名誉教授)

 第11回クリニカルバイオバンク学会シンポジウムの開催にあたり、皆様にご挨拶申し上げます。

 近年、医療DXの急速な進展と、医療機関を取り巻く経営的な困難が重なり、クリニカルバイオバンクの在り方そのものが大きな変革を迫られています。診療情報の高度な利活用、AIによる解析支援、そして医療資源利活用の最適化が求められる中で、バイオバンクは単なる検体保管の枠を超え、臨床・研究・経営の三位一体を支える基盤として、再定義されるべき時代に入っていると思われます。

 今年度のシンポジウムでは、「ゲノム医療の新たなフェーズにおけるバイオバンクの意義を考える」をテーマに、全国の医療機関・研究機関・行政関係者の皆様から多くのご参加をいただき、実に多彩で実践的な企画が展開されました。医療現場における検体収集の課題、倫理的配慮、データ連携の技術的障壁、そして制度設計の方向性など、これまで曖昧であった論点が明確に整理され、今後の展望が見えてきたことは本学会にとって大きな成果です。

 しかしながら、これらの議論は一過性のものではなく、制度・技術・倫理の三領域において継続的な対話と検証が不可欠です。そこで来年度も、今年度の議論を踏まえた継続的なテーマ設定を行い、より実装可能なモデルの構築に向けた活動につなげられたらと思っております。そこで来年度の第11回クリニカルバイオバンク学会シンポジウム「次世代医療におけるバイオバンクの未来像」をテーマとして議論を深化させていきたいと思っております。

 この挨拶を準備していた時に、坂口志文博士、北川進博士、お二人のノーベル賞受賞の慶びの報が飛び込んできました。基礎研究の分野の研究者のエネルギーが高まっていることを実感しますが、こうした研究の礎としてクリニカルバイオバンクのような基盤的インフラの充実は必須とも思えます。検体・情報・倫理の三要素を統合し、研究者が安心して活用できる環境を整えることこそが、次世代の医学の進展を支える鍵であり、その重要性は今後ますます高まることでしょう。

 さて、2026年度クリニカルバイオバンク学会シンポジウムの開催地を佐賀県佐賀市とさせていただきました。佐賀は、古くからアジアとの交易の要衝として栄え、唐津や伊万里、有田といった、世界に誇る陶磁器文化が今もなお受け継がれています。また、佐賀は「静けさ」と「温かさ」が共存する土地でもあります。雄大な有明海、神秘的な吉野ヶ里遺跡、そして心をほどく嬉野温泉や武雄温泉、有明海と玄海灘と全くことなる自然にはぐくまれた食文化。学会の合間にぜひ自然あふれる佐賀の文化に触れていただければと思います。

 本学会は、臨床と研究の架け橋として、現場に根ざした知見と制度設計の両面から、持続可能なバイオバンクのあり方を模索し続けます。2026年度シンポジウムが、皆様にとって実り多い議論と出会いの場となることを心より願っております。

arrow_upward